韓国は英語教育が進んでいて、英語を話せる人は多い。それはもう常識だ。サムスンがTOEIC (LR) 900点を新入社員の足切りラインにしていたり(現在は、スピーキングテストが使われている)、LGも800点が足切りラインだったりする。日本では課長の昇格条件が730点、なんていうのとは訳が違うんです。いい企業に就職するためには、英語ができないと採用されない。だから、皆英語の勉強をがんばる。つべこべ言わずにがんばる。ちなみにTOEFL iBT(120点満点)の2011年の平均点は、韓国が82点、中国が77点、日本が69点だ。この差はかなり大きい。そこまで言語差がない民族同士でなぜこんなに差が出るのか、それは英語教育の差にある。
1997年、アジア通貨危機で韓国はIMF管理下に入った。そこから、海外に出てがんばるために国も英語教育に力を入れ、国民に広がった危機感からも英語熱が高まった。小学校では英語教育が5年生から始まり、2001年には小学校3年から英語教育が始まるようになった。大学でも英語の統一試験はあり、TOEFLなども利用されてきた。フィリピンに語学留学する人はとても多く、フィリピンにいる外国人の大半は韓国人だ。そんな韓国で、英語の国家試験が導入された。それがNEAT (National English Ability Test)だ。
NEAT ~ National English Ability Test ~
NEATは、英語の国家試験だ。1級、2級、3級と3種類がある。1級のテストは、大人向けテストでビジネス英語が中心となる。TOEICのようなもので官公庁向けだ。2級のテストは、学術英語が中心で、大学入試に利用される。3級は日常英語で芸術系大学の入試などで使われる。4技能を測るテストになっていて、Speaking / Writing / Listening / Reading の全てが問われる。ここがポイントだ。日本の大学受験では、Reading、特に文法に力点が置かれる。Speakingはほとんどなく、和訳が中心だったりする。英語で考えられれば和訳などいらないのに。
1級に関しては、2013年に5万人、2015年に15万人の受験者を見込む。2級、3級は2013年に60万人、2015年に120万人の受験者を見込む。こちらは、大学受験に必須となる試験なので、必ずこれだけの人が受けることになる。ちなみに、大学個別での英語試験はなく、NEATだけになる予定だ。
NEATのスピーキングテスト、TOEIC SW のスピーキングテストの問題に似ている。質問を出されてそれに答えたり、6つの絵を見てその内容について答えたり、情報提示された資料をもとに答えたり、というもの。英語で説明するとなると難しい、と感じる人も多いだろう。そんな試験が大学受験のために必要となる。皆、これのために勉強をするので、スピーキングの実力は伸びていくだろう。韓国の英語教育制度、とてもいい制度だと思う。
受験を変えれば英語教育も変わる
高校生にとって英語を勉強する目的は、テストのためだ。大学に合格するために、英語を勉強する。学校も合格者数を増やしたいのでそのような方向に力が入れられる。いくら将来英語が必要になるからやったほうがいいと言っても、多くの人を動かすことは難しい。明確な目的があるのは大学受験。テストのために英語を勉強する、というのは本来の目的とは違うのだが、それ以外で皆に英語を勉強させる方法を探すのは難しい。それならば、テスト対策が本当に役立つものになっていればよい。日本人の英語力を話せる方向に持っていくためには、大学受験自体を変える方向に持っていけばよい。大学受験がスピーキング中心になれば、高校の英語授業も必然的に変わる。文法中心ではなく、スピーキング中心になる。韓国のNEATのように、日本もスピーキング試験が導入されれば、きっと良い方向に変わっていくであろう。