『俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方』 坂本孝 著
ブックオフ創業者であり、俺のイタリアン、俺のフレンチを展開する俺の株式会社社長の坂本さんの著書。現在73歳。この本、経営とは何かが語られていて勉強になる。お店のビジネスモデルそれ自体も面白いのだけれど、それ以上にその裏にあるものが非常に重要で、それが競争優位性になっていると感じる。
坂本さんのビジネスは3勝10敗だと言う。そのうちの二つがブックオフと俺の株式会社。60歳過ぎてブックオフの会長を退任することになった。普通ならそれで引退かというところで、また新たなビジネスを始めて大ヒットさせた。それが俺のイタリアン、フレンチ。ビジネスをやるのに年齢なんて関係なく、どんな課題を解決したいのか、どうしていきたいのかという想いが重要だ。
俺のイタリアン、フレンチでは、三星レストランなどで働いていた一流の料理人が厨房にたち、低価格で料理を提供し、フード原価率60%超などにする。その代わり立ち飲み形式にしてお客の回転率を高めることで利益を出すというモデルだ。言葉で説明すると、そうなんだねぇとなるけれど、その裏にはなぜ超一流の料理人がそこで働くのか?という疑問が残る。3万円のフルコースを提供していた料理人が客単価3000円の料理を作るのだ。一流のホテルや料亭などでなく、3坪の厨房で働く。そこには、料理人の何のために働くのか?という根本的な欲求が出てくる。
一流のレストランなどで働いていても料理人は「未来が見えない」というのだ。それは常に決まったメニューを作っていくしかないなど、裁量権が少ないためだろう。だが、俺のイタリアン、フレンチでは料理人に裁量権を与える。料理人が食材を仕入れたり、価格にも関与する。料理人が裁量権を持ち経営に入り込むという仕組みになっている。これがビジネスモデルだけでは見えない他社が参入しても簡単にマネできない大きな強みだ。
坂本さんは、会社の理念として、物心両面の幸福を追求を掲げている。これは、二つから成り立っている。一つは、自分が成長した、ということから得られる幸福感。これが「心」であり、精神的な幸福だ。もう一つは、これだけ働いたのだからいい報酬をもらいたい、という「物」の部分。料理人は一流と言われる人でも給与が600万程度だという。だけれども、がんばった一流の料理人には1000万払えるようにするのが経営者の役割だ、という考え。こういった考えが根本にあるからこそ実現できた競争優位性。勉強になる。