アーカイブ ‘ 2013年 1月12日

ヤル気の科学

ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣」 イアン・エアーズ 著
 ヤル気の科学

 

本屋でこの本を見た時、帯には、「試験勉強、ダイエット、禁煙、英会話・・・すべてに応用可能!」と書いてあった。すぐに購入。行動経済学はサービスにも活用できて、面白くて好きなので、こういった類の本は大好きだ。 さて、結論から言うと、この本には語学学習を続けるためにどうしたらよいかという解は書かれていない。しかし、そのヒントとなる実験結果はいくつか書かれていた。行動経済学は、通常のビジネスと同じく、仮説検証の繰り返しでわかってきたことだ。

 

例えばこんなことがわかっているので、その考え方を英語ビジネスに利用していけるのかもしれない。

 

厳しい鞭で成果を出させると、行動変化は長続きせず、反動が起きる
 ダイエット実験にて、減らないと高額罰金というようなものをすると、通常より痩せたけれども、その実験が終わった後のリバウンドも大きかった。厳しすぎるコミットメント契約だと、長続きさせるのは難しいようだ。

損失フレームでは、人は高リスク戦略を選び、利得フレームでは低リスク戦略を選ぶ
伝染病が蔓延していて600人が死ぬといわれているとき、どちらの方法がよいかという実験が行われた。一つ目は、療法Aを使うと、400人が死ぬ。療法Bを使うと、確率1/3で誰も死なず、確率2/3で600人全員死ぬ。こういう損失を受けるというフレーミングをされた聞かれ方をすると、どちらも助かる期待値は同じだが、78%の人はリスクの高い戦略である療法Bを選んだ。次に、療法Aを使うと、200人が助かる。療法Bを使うと、確率1/3で600人全員が助かり、確率2/3で誰も助からない。この場合は、利得を受けるというフレーミングをされた聞かれ方をしたので、72%の人がリスクの低い戦略である療法Aを選んだ。同じことを聞く場合でも、損失を強調するのか、利得を強調するのかで、何を選択するかの確率は大きく変わってくる。言い方次第で大きく誘導できる可能性があるということだ。

現金よりも有形財やサービスのほうがヤル気が出る場合もある
2$の現金が必ずもらえる場合と200$相当の豪華食事券が確率1/100でもらえるくじでは、84%で後者が選ばれた。一方これが現金200$が確率1/100でもらえるくじとなると、65%になるという結果があった。現金なら食事もできるのだが、普段買わないような豪華アイテムがあるとそちらを選びたくなる、という心理が働くようだ。

社会的文脈が大事:自分と似た人が成功していると知ればうまくいく
ホテルのタオル再利用でいい例がある。ホテルで「環境保護のためタオルの再利用にご協力ください」というカードがあった場合と、「お客様の75%がタオルを再利用なさっています。あなたもご滞在中にタオルを再利用して、環境を守りましょう」とあった場合で、後者の方が再利用比率は26%も高かったという。「みんなやってるよ」だからあなたもやりましょう、というメッセージはとても強力なことがわかる。この考え方は色んなところで使える。

意識化フィードバックを与えること
体重を定期的に測る人のほうが体重を維持しやすいという傾向がある。数値を見える化して意識させると、それだけで効果があるということ。

適切な目標を設定すること
全くできない目標でも、簡単な目標でもなく、適度な目標を立てることができると、最も効果が高いということがダイエットや論文校正の実験からわかっている。仕事や学習で適度な目標を設定することの大事さにつながること。

見かけ上進捗しているのを示す
来店でもらうスタンプで10個のスタンプを集める、というカードがあったとき、普通に10個のスタンプを押すものよりも、最初の2個が押されていて計12個になっているカードの方が効果はあり、早く達成された。また、スタンプが集まってくると、次のスタンプまでの間隔も短くなったという。これは、ポイントのようなものを考える上では参考になる動きだ。

コミットメントは本気かどうかを試すふるいわけ装置になる
もう浮気はしない、という夫に対して、今度不倫をしたら妻の財産の取り分を増やすという契約書をさせると、誠意のフィルターとして機能する。

自制心は限られたリソースでもあり、使いすぎると枯渇してしまう
やりたいことを我慢させると、自制心のリソースを使ってしまい、次に行う自制心を要する仕事で効率が落ちるという結果がある。むやみに自制心を必要とするような行動を強要すると、他のことに影響が出るようだ。もともと喫煙する人に禁煙を強要すると、他の部分に影響が出るのだろう。

 

こういった様々ある結果をうまくサービスに組み入れていく。組織に取り入れていく。こういった実験結果をしっかりと取り入れていくことが出来ると、よりよくなっていくのだろう。


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